ニフクラ ブログ

ニフクラ/FJcloud-Vやクラウドの技術について、エンジニアが語るブログです。

【レポート後編】第23回ニフクラ エンジニア ミートアップ 新春特別座談会「2020年のクラウド業界はこうなる!」

前編から続く

fujitsufjct.connpass.com

後半戦は、参加者からの質問・(人生)相談に登壇者が答えるというスタイルで進みました。

f:id:sameshima_fjct:20200128195353j:plain

質問 クラウド活用をIaaS以外にも拡大させるには?

クラウドの案件は増えてきたが、IaaSに留まる。PaaSなどを使いこなせていない。
どうやって広げていけばいいのかご教示いただきたい。

五月女氏

去年くらいからやっとIaaS以外を使う人増えてきたかなと感じる。一番のポイントは、さきほどの人材の問題とも関連するが運用がIaaSでは回らなくなってきた結果ではないか?

吉田氏

MicrosoftというかAzureでは視点が異なっている。IaaS中心のラインアップだと、そもそもIaaSベースのセールスになる。 マネージドレベルの高いサービスをもってるSIベンダーだと、お客さんにIaaSからSaaSにして作るのやめようという話はしない。自分がクラウドを使い始めた頃(クラウド黎明期)は、IaaSしかなかったが、今は選択肢が増えた。何のためにクラウドへ移行して楽をしたいのか考えててほしい。
IaaSにデプロイしたものは、再構築するという話になりづらい。現在IaaSでうまく回っているものを5年後どうするか、IaaSでいくのか?それとも違う選択が必要なのか考えたほうがいい。

角氏

デジタルトランフォーメーションするにはIaaS<SaaSという話もあるが、むしろソフトウェアファースト(どちらかというと思想)が重要で、(IaaSじゃなくPaaSやSaaSで工数やコストを削減…というより)ビジネスモデルそのものにその思想を入れるのが重要だと思う。

f:id:sameshima_fjct:20200128195738j:plain

工藤氏

IaaS大好きな工藤といいます(笑)
(自身は)サーバーレスの勉強会とかを主催しているが、そもそもIaaSでサーバーを立てて、ソフトウェアを乗せるビジネスをやっている会社にいる。どちらかというと上に乗せるもの(アプリ)に目が行く。 SaaSとかPaaSよりは、(自社が)運用しやすい環境にお客さんをもっていきたいという観点からIaaSのほうがいいと感じる。

五月女氏

(当社は)何でIaaSをやるのか?という話を顧客にしたことがある。 一番のメリットは、問題が起きた時にエンドユーザーに説明がつくこと。

工藤氏

障害が起きた時に説明ができない(PaaSやSaaSだと)。

宮原氏

既存のお客様でクラウド移行をやっている人は、すでに完結してしまっているから新たに機能追加とかPaaSを活用するとかいう方向になりにくい。それこそ、デジタルトランスフォーメーションを実現するために新しい何かを作るとか、さっきの五月女氏のいうようにリアーキテクトしないと機能追加ができないのでマイクロサービス化するとか、あと吉田氏がいうようなデータ利活用とかを考えないとクラウドをさらに活用するという方向にはいかないのかな?と思う。

吉田氏

マイクロソフトの米国のブログに、これまでの10年とこれからの10年という記事があり、これまではコストメリットのためにやってきた、ここからの10年はデータを活用していくフェーズになっていくと書いてある。 欧米なら納得できるが、日本はそうなってない。 日本でKubernetesが盛り上がらない話があったが、エンドユーザーがソースコード持ってない(SIベンダーが持っている)から。Kubernetesのようにソースコードを自社でもっているからこそ役に立つようなアーキテクチャは、日本のエンドユーザーとしては扱いづらい。外資系クラウドベンダーがソースコードを持っている人向けのサービス開発にシフトしてくると、日本のユーザーにメリットがあるサービスが今後出てこないかもしれない。 そうなると日本独自の路線になったときに、SIベンダーは開発してくれない可能性がある。
最終的に欧米化するしかない。そこで初めてKubernetesがいいという話になるのかなと思う。
昨年くらいから、キャッチーなBUZZるキーワードが減ったのは、日本全体が停滞しているのが原因で、テンションが下がった結果としてデジタルトランスフォーメーションのようなふわっとした(エンジニア的に)言葉がでてきたのでは? 日本は構造的な問題が大きすぎる。要はがんばっていこうって話です(笑)

f:id:sameshima_fjct:20200128193737j:plain

鈴木氏

私はIaaSでもPaaSでも好きなものを選べばいいと思う。
ソリューションをPaaSで作るようになってきたが、トラブルが起きた時にまったく原因がわからないことがある。 実際にあった話だがデプロイしてなかなか動かなかったものが、何度かやっているうちにたまたま動くようになった。 (トラブルの原因を)説明できないというのが難しい。

宮原氏

日本のエンジニアは、「クリエイティブ」なところに力をかけすぎ。やってる感はあるだろうがエンジニアも、これからはサービスを使う・自動化することで工数を削って、デジタルトランスフォーメーションのアイデアを営業部門とコミュニケーションをしながら考えるとかにシフトしたほうがいい。

質問2 日本の企業にありがちな、上流と下流の問題解決

営業やマーケティング(上流)がエンジニアやものづくり(下流)より偉いという空気がある。 どうすれば、変えられるか?

吉田氏

社内(マイクロソフト社)に限定するとエンジニアが優遇されている。 他の外資だと、営業にアゴで使われるとかもあると聞いたことがあるがウチは逆。営業が変な提案をするとエンジニアが怒るようなことがある。
社会的なレイヤーの話かもしれないが、(今のご時世)会社として「上流>下流」のようなことを続けているとシュリンクしていく。会社を変えようとするよりは転職したほういい(笑)

f:id:sameshima_fjct:20200128193610j:plain

角氏

うち(さくらインターネット社)はソフトウェアでもデータセンターでも自分で何かを作ろうという文化がある。 「上流>下流」が存在するというのは、日本の産業構造がおかしい。このままでは、(吉田氏と同じ意見)シュリンクする社会になる。お客さんはもちろん外部に対してもモノづくりに対するリスペクトを自社だけでなく、色々な会社や地域の人と一緒に広めていきたいと考えている。

五月女氏

うち(富士通クラウドテクノロジーズ社)はそもそも親会社がいる(笑)が、エンジニアが強すぎて営業さんかわいそうみたいな雰囲気。2018年くらいからやっているのは、こういった開発の手法があるこういったサービスの考え方(開発の思想)を、エンジニアがほかの部門に伝える努力をしている。
自分の手の届く範囲から少しづつ変えていけば日本全体も少しづつ変わっていくのでは?

鈴木氏

ネットで採用担当が話題に(人材流出防止に押しかけラグビーという話)なってたが(笑)、実際にエンジニアの転職が 課題になっていて離職防止策が行われている。しかし、営業やマーケティングの人から「俺たちはないの?」という話がでる。エンジニアに比べると専門性がないと言われるが、彼らにも独自の技術や手法があり才能といえるものが存在する。それが最善かどうかはわからないが、マネジメントを行う人が好きなことをさせてあげるのがいいのかと思う。

f:id:sameshima_fjct:20200128200515j:plain

工藤氏

うちはAWSのクラウド専業の会社なので、あまり上下関係がなくフラット。

宮原氏

自分の会社(日本仮想化技術社)は13年目だが、エンジニアが楽しく仕事ができることを大事にしている。 他の会社のエンジニアが困ったときに駆け込み寺として使ってもらえるような最終防衛ラインを作るような場所。 お金を動かす権限を作る人や、要求仕様を作る人は技術者じゃなかったりするが、そういう人を場合によってはたぶらかしてお金をださせたり、あれもやりたいこれもやりたいと迷走する人の方向付けをしたり、そういう人のつなぎ役をするエンジニアの管理職が必要。
プロデューサーディレクターで技術をわかっている人がいないとデジタルトランスフォーメーションはできない。

五月女氏

いわゆるセールスアーキテクトですね。

※この後もテキスト化しづらい話が盛り上がる。

最後に、登壇者からひと言ずつコメントをいただきました。

工藤氏

今日は自分だけユーザー寄りの立場だったので話を聞いて興味が尽きなかった。

鈴木氏

技術のコアな話が出るかと予想していたが、意外だった。来年はどうなるか。

角氏

私も技術の話が出るかと思っていた。しかし、デジタルトランスフォーメーションとか社会的な課題、人材の話が中心であり意外だった。3年後は、(業界も)大きく変わっていると思うので、その時の変化をもう一度考えてみたい。

吉田氏

ありがとうございます。

五月女氏

まったくこのメンバーと事前に打合せもしないでやってきたのに、みんな同じような話になった。
技術ではなく社会だなと感じた。

宮原氏

デジタルトランスフォーメーションを進めるには何をしたらいいのか、クラウドとかアジャイルは手段であって目的はエンジニアリングで価値を創造するところが共通認識にあると思った。
成功事例もでてきているので参考にしながら新しい価値創造をしてもらいたい。

ということで、約一時間半の座談会でしたが大変盛り上がりました。 その後の交流会も時間ギリギリまで続き、登壇者と参加者の交流も活発に行われていたようです。

f:id:sameshima_fjct:20200128204601j:plain

また、次回の座談会(年末か年始)もお楽しみに!