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【レポート後編】第13回ニフクラ エンジニア ミートアップ「座談会 どうする?どうなる?2019年のクラウド業界 」

こんにちは。 ニフクラエンジニアミートアップ事務局の鮫島です。

2月27日に、開催された第13回ニフクラエンジニアミートアップ座談会「どうする?どうなる?2019年のクラウド業界」前編に続き、後編をお届けします。

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以下後編

宮原氏:
リフト&シフトがそろそろ限界になっている?

五月女氏:
リフト&シフトで、リフトしたデータベースはだいたい塩漬けですね。

宮原氏:
鈴木さんのところはいかがですか?

鈴木氏:
裏側でデータ活用をするための移行はあるけど、基本は新規が多いですね。データ活用とかIoTは新規の領域だからいくらお金を注いでいいかわからない。費用対効果は考えなければならないけど、過去にあるものを置き換えるわけでではないから費用感がわかりにくいんです。やってみてわかることもありますね。小さいところからはじめるか、トップが決断するしかない。だから、小規模から始められるクラウドじゃないとできないというのはあります。

宮原氏:
工藤さん、コンテナとかサーバーレスでクラウド終わった感とかないですか? f:id:sameshima_fjct:20190315160125j:plain アイレット 工藤氏

工藤氏:
コンテナは注目されているけど、かといってクラウドが終わったという感じはないですね。トレンドでコンテナ使いたい気はあるけど、お客さんからあまり要望は出てこないです。あと、インフラ側の構築をやっていると開発側のことは実はよくわからない。コンテナとかは、使えたとしても予算がそもそも無いです。

横田氏:
サーバーレスとかコンテナって安く上がったりしません?

工藤氏:
開発側はリフトの予算しか取っていないのです。基本、塩漬けで2年くらいたってからやりましょうかという流れです。(皆さんなるほど…という表情)

五月女氏:
わたしの持論では、コンテナに関してはユーザーが欲しがっているものって違うんじゃないかと思っていて、実はコンテナではなく無限にスケールするホスティングじゃないか?と思っています。

横田氏:
いや、それは10年前にクラウドを提案した時に言われたことと同じですよ笑

すかさず横田氏からのツッコミが入ります。

f:id:sameshima_fjct:20190315160346j:plain 横田氏と「よくしゃべる組」

吉田氏:
コンテナの話って、インフラの側面と開発の側面がまざってます。日本の場合、インフラ出身の人が最初に触り始めました。他の国ではどちらかというとインフラより、DevOpsのプラットフォームとしての「文化」の側面で使おうとしています。開発系の人がインフラのことはよくわからないというのは、日本の場合内部統制の関係で開発する人とインフラ見てる人と別々にされたというのが致命傷になっている気がします。お互いのことを知るということがなくなったのです。工藤さんがおっしゃっていたのもそこかなと。両方知っていないといけないというのが「日本が遅れている感」の根本原因じゃないかと思います。

宮原氏:
コンテナって、インフラで流行るか開発で流行るかどっちでしょうね。

五月女: そこは、まだ確信もてないんですよね。

横田氏:
いや、ぼくは確信もってます。これからはコンテナです笑 開発者のほうが使うと思います。

宮原氏:
開発者の側から見ると、コンテナってプッシュすると勝手にビルドされてCI/CD回るブラックボックスなんですよ。今、コンテナが盛り上がっているのはたぶん使い方が分からないから。先日、Docker超入門とか開発者向けにやったら、「これだったら使えるかも」と言う意見が大多数でした。だから、自動化の一部として使われていく可能性もあります。

横田氏:
うちだとインフラより開発者が最初に使い始めましたね。

宮原氏:
端的にいうとOps化することで、オンプレ構築系の仕事は無くなった。開発者に寄り添って開発環境テスト環境までミドルウェアのPaaS的なものを提供してこれ使ってくださいっていう側に回らないといけないと私は思いますね。

五月女氏:
その観点でいうとコンテナは究極で、今まではPaaSでDBとか用意していたのを、コンテナはDBも入ったまま送られてきます。実行環境をパッケージング化してバイナリとして配っているので、後はバイナリを配る共通ルールさえ決めればいいんですよ。

宮原氏: 工程管理もシェフやAnsibleでやるようになるとインフラエンジニアのやることが減りますよね。全体設計はあるけど、生き残り戦略としてはより開発者側に立つ必要があると思います。

五月女氏: 実行環境としてローカルのパソコンで作って動いたのをそのまま提供する観点で開発の方々は動いていて、インフラエンジニアの観点だとそれをちゃんと動くようにした上でどうやって快適に配信できるかということ、(開発者に)バイナリとして配るときにいかにそれを意識させないようにするかを我々は考えないといけないと思っています。そういうのをお客さんが求めてるんじゃないかな?というところにたどり着いています。コンテナってネットワークの設定付きJavaをバイナリとして配っていると考えています。

宮原氏: クラウドってつかみどころがなくフレキシブルで、それこそ集中と分散でどこかのDCにある大量のサーバーを切り売りするというところがひと段落して、新しいアーキテクチャがエッジだとかいう状況になってきてます。マイクロサービスアーキテクチャって実装の話だからあまり大きなシステム設計の話じゃないので、どちらかというと、5Gとかエッジの方が興味があります。

鈴木氏: エッジって騒がれてますけど、スマホだって昔のスパコン並み性能だしエッジだと思ってます。5Gに関しては、東京の人ならイメージできると思いますが、鉄道インフラに合わせて町を発展させるようなことを考えないといけないです。困った人が解決法を見つけるような感じで、提供者側だけで考えるのは難しいのです。だから各社が共創といってアイデアを出し合っています。5Gに関しては困った人の課題を解決するのが一番求められていますね。

宮原氏: このあたりで、クラウドの将来に関しては議論が出尽くした感がでてきたので、まとめに入ります。各人のやりたいことを一言どうぞ。

・・・ということで、ようやくまとめに入りますが、余裕で皆さん語り続けます。

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宮原氏:
アイデアソンをやりたいです。エンジニアだけ集めてもろくなことが無いですよ。エンジニア視点でしかアイデアがでない。たとえば、農業やってる人とか漁業やってる人のほうがトリッキーな解決策を考えるんですね。斜め上から落ちてくるかのような、わかってない人のアイデアを、既存技術を応用して下支えすることを考えたいです。

五月女氏:
今後力を入れたいことは、今のお客さんがどんなことやりたいのかどんな使い方してるのか、どんな考え方をしているかを改めて知りたいと思っています。 大事なのは「取れていない」案件です。他社に負けてる案件だから埋もれてわからない。そういう案件を深堀してみたい。取った案件は横展開していくから問題ないんです。もう10年やってますので、3年前とか6年前に一回検討したけど取れなかった案件が今だったら取れるかもしれないし、また更新する時期にきているかもしれない。海外のソリューションの真似ではなく日本独自の解決策を考えたいですね。

工藤氏:
お客さんとの付き合い方とか、開発側との意思疎通ができていないという課題があるので、そこでやっていきたいのがコミュニティです。サーバーレスカンファレンスとか主催しているのですが、グローバルで今年からちょっとそういうイベントの毛色が変わってきている気がします。開発側とインフラ側がより密に関わっていくようなコミュニティの作り方をしています。大きなカンファレンスも増えていくとは思いますが、40人くらいの小さいカンファレンスがもっと増えるのではないかと思ています。会社の垣根を超えたような情報交換、勉強会とかの活動をやっていかないといけないと思います。

宮原氏:
ところで皆さん、開発側とインフラ側ってコミュニケーションとれてます? 取れていると思う人!あれ?では、取れないないと思う人!(と、来場者に挙手を求めるが、あまり手が上がらない)そこが課題じゃないかと思います。今までだったらサーバー調達に一か月二ヵ月とかかかっていたのが、クラウドになってすぐできるんじゃないの?くらいに開発側からは言われるわけですよ。コミュニケーションのやり方で解決できるんじゃないかと思います。

五月女氏:
インフラのほうが属人化しやすいんですよね。

宮原氏: もう、標準化とかそういう話ですよね。ガバナンス効かせるっていう。

吉田氏:
ルール作りですかね。一部の部門とか案件でクラウド使ってみようという話がでて、プロジェクトが走ります、サーバーたてまくります、請求金額みてビックリみたいなことがあって、そんなもん使ってられねえよ!ってことになるんです。そうならないように、ルールを作って見える化するとか仕組みを作って基盤として整えることをやってると、そういうことが起きないので(ガバナンスが機能して)クラウドの利用が伸びるわけです。

宮原氏:
こちらのお二人(工藤氏と鈴木氏)さんは、ユーザーよりだと思いますが、ガバナンスとかどうやってます?

工藤氏:
私は立ち上がった後に入っていくことが多いのでルール作りを行うような場面に入っていくことがあまりないですね。なので、開発側と会話が出来なかったりとかいうケースが多いです。

鈴木氏:
ガバナンス的には2種類ありまして、ルールが無いので作るところから手伝うケースとがあります。クラウドやIoTのセキュリティとか。大企業だと決まってるところもあります。しかし、問題なのは分かっていなくてルール作る場合と、わかっていて作るケースがありますが、分かっていない場合が大変です。ルールはあるのに守られていなくて、野良サーバー作ったりするわけです。 昔のインフラエンジニアは堅かったけど、クラウドの時代になってインフラエンジニアも軽くなりスピードも速くなりました。使う側からするとあまりインフラを意識しなくなってきているんじゃないかと思います。

横田氏:
ポジショントークでいうと個人的には物理殴りたいんですよ。でも、クラウドとかソリューションよりがっと、データセンターを売っていきたいと思っています。レッドオーシャンを泳ぐつもりで。もう一回仮想化からやりたいなと。データセンターを再構築したいと思ってます。でも、個人的には流行のキーワードメインで、結局ナウいことが好きなんでぼくはKubernetes入れたいんですよ。個人ではIaaSはそのまま行きます。

吉田氏:
クラウド・バイ・デフォルト原則が去年6月に政府から出されました。それは、ユーザー側の考え方なんです。ユーザーの目線がそうなったら、求められる側の変化も必要で、SIerやパートナーがユーザーが求めてきた要件に対応できるのかが重要になります。収益構造の問題などで、SIerなどがそれに応えきれていないんです。ハードウェアを売っているタイプのSIerは売り上げが目減りするからクラウドとか売りたくないんですよ。しかし将来的には、そういう徹底的にレガシーなところは棄てられる可能性がある。ユーザー側も付き合いが長すぎて切れなくて共倒れする可能性もあります。それが最大の悩みです。今は小さいところでもSIできるので、2019年はSIerが変わらないといけない。ユーザーは自分でチャンスをつかまないといけないと思います。

宮原氏:
90年代のデジャブを感じます。歴史は繰り返すというか。日本って、利益ベースでモノを見ないじゃないですか。どれくらいの利益を上げたかを考えないと。売り上げではなく。ユーザーがどれくらいのメリットを得られたか、開発サイドとユーザーサイドが関係を密にして、あまり好きな表現ではないのですが寄り添うような形で行かないといけないと思っています。

・・・といったところで、長丁場ながらも大変盛り上がった座談会はいったんお開きになりました。

最後に、ご来場者様からの質問があり、やりとりが大変面白かったのでご紹介します。

質問者:
霞が関あたりで、外資ではない国内クラウド事業者のデータセンターに置きたいという意向が出始めています。クラウド事業者またぎという要件です。しかし、実際にやった試しがないんです。「オンプレとクラウド」から「クラウドとクラウド」、東西リージョンもまたいで事業者もまたぐ一次事業者がこけた場合の対応。そういった事例はあるでしょうか?

五月女氏:
官公庁がどれくらい真剣に考えてるのかが疑問です。PaaS使うのはやめてIaaSレベルならエクスポートできるから可能でしょうけど。

質問者:
各社とも一銭も値引きせず、このままじゃ外資メガクラウドに淘汰されちゃうなという不安を感じています。

吉田氏:
今の話で思うところがあります。ざっくり政府から国内を利用しなさいというお触れがでたという報道がありました。でも、よく読むと国内じゃないんですね。日本国法で縛れることが重要、要するに警察や裁判所が強制力を発揮できるかどうかです。官公庁から、事業者またぎのマルチクラウドという件で某メガクラウドのサブで当社のクラウドを…という話はあります。しかし、事業者がつぶれる可能性を恐れているのか、BCPなのか、前者なら株価を見ろといいたい。なぜそれを心配しなければならないのかをちゃんと聞かなければなりません。おそらく感覚的な要件ではないかと思います。それはきちんと事業者が説明していかなければならないと私は考えています。

基本的には外資クラウドの立場である吉田氏ですが、極めて冷静なコメント・名言が飛び出しました。
手前味噌ではございますが、皆さん「いい話が聞けたなあ・・・」という表情で、交流会・懇親会に入ってくださいました(笑)

交流会・懇親会も盛り上がったのは言うまでもありません。 f:id:sameshima_fjct:20190315154911j:plain

次回のニフクラ エンジニアミートアップは、3月27日です。 こちらも盛り上がること確実なので、コンテナ/Kubernetesに興味のある方は是非お越しください。

fujitsufjct.connpass.com