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ニフクラ/FJ Cloud-Vやクラウドの技術について、エンジニアが語るブログです。

アイ・オー・データの法人向けNAS、LAN DISK HDL-HAシリーズでニフクラ連携を試してみた

こんにちは、日本仮想化技術の水野です。 今回は、アイ・オー・データ機器様のご厚意によりLANDISK HDL-HAシリーズの実機をお借りして、レビューを書いてみました。

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HDL2-HA(2ドライブ)

データの共有と保全を担うファイルサーバーは、企業が業務を行うにあたって非常に重要なインフラと言えるでしょう。従来はWindows ServerやLinuxを用いて構築することが多かったファイルサーバーですが、最近では高性能化が進んでいるNASアプライアンス製品を利用するケースも増えています。またファイルサーバーやNASを単体で利用するのではなく、バックアップデータの可用性を高めたりディザスタリカバリの強化を目的として、クラウドを併用するのも一般的となっています。

LANDISK HDL-HAシリーズとは

LAN DISK HDL-HAシリーズは、アイ・オー・データ機器製のLinuxベースのNAS製品です。おもに法人での利用を想定しており、高速なデータ転送が可能な10GbEのネットワークに対応しています。またネットワークインターフェースはふたつ搭載されているため、通常のデータ転送用と、バックアップなどを行うメンテナンス用のネットワークを分離する構成を取ることもできます。

ディスクは一般的なRAIDレベル(2ドライブモデルでは0/1、4/6ドライブモデルでは0/1/5/6)だけでなく、アイ・オー・データ機器独自の「拡張ボリューム」での冗長化に対応しています。拡張ボリュームを利用すれば、NAS運用中のオンデマンドな容量拡張や、ディスク交換時のリビルド時間の短縮を実現しています。

2ドライブのHDL2-HAシリーズの他に、4ドライブのHDL4-HAEX、6ドライブのHDL6-HAモデルもラインナップされており、ユーザーやデータ量に応じて最適なモデルを選択できるようになっています。

ファイルサーバーとしてセットアップする

HDL-HAシリーズは、初回設定マニュアルに沿って設定を行うだけで、簡単にファイルサーバーとして利用を開始できます。

本製品をネットワークに接続した状態で電源を投入すると、自動的にDHCPサーバーからIPアドレスを取得します。ファイルサーバーとして運用する以上、起動するたびにIPアドレスが変化してしまうと不便なので、LAN DISK導入用のツール(LAN DISKコネクト/MagicalFinder)を利用して、IPアドレスを固定しておくと便利です。

初期状態では管理者ユーザー(admin)のパスワードは設定されていないため、ユーザーがパスワードを設定する必要があります。WebブラウザーからLAN DISKのIPアドレスに対してアクセスすると、「LAN DISK Webファイルマネージャー」が開きます。「管理者ページ」をクリックしてadminユーザーでログインすると、パスワードの設定が行えます。

管理者パスワードの設定が完了すると、自動的に初期設定画面に遷移します。ここでは必要に応じて、LAN DISKの名前やネットワークの設定等が変更できます。特に変更の必要がなければ「初期設定を保持する」をクリックして、初期設定は完了です。

これらの手順をわかりやすく収録した、セットアップ手順動画も公開されています。

www.youtube.com

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LAN DISKの初期設定画面。RAIDモードの変更や、LAN DISKが参加するドメイン(Active Directory)の設定なども行える。

ニフクラのオブジェクトストレージを利用してデータをバックアップする

企業で運用しているファイルサーバー上には、業務上重要なデータが保存されているはずです。こうした重要なデータの喪失を避けるためにも、常日頃からのバックアップは欠かせません。

HDL-HAシリーズは複数のディスクを搭載することができ、RAIDや拡張ボリュームで冗長化がなされています。しかしRAIDや拡張ボリュームは、ディスクが故障してもサーバーを即時停止させないための冗長化の仕組みであり、データを破損や誤削除から保全する仕組みではありません。たとえディスクを冗長化していたとしても、バックアップは絶対に必要です。

LAN DISKには、USBで接続したハードディスクへデータをバックアップする機能が搭載されています。しかし、こうした手近な物理機器へのバックアップは、地震や台風、火災などに被災した場合、NAS本体と同時に喪失してしまいます。特に日本においては、地震や台風による被害に遭う確率は、決して無視できません。そこでDRの観点からも、重要なデータはクラウドにバックアップを取ることを推奨します。

LAN DISKには、機能を追加できる様々なパッケージが用意されています。この中に「ニフクラ連携」パッケージを導入すると、LAN DISKとニフクラのオブジェクトストレージ間でデータのコピーが可能になります。

管理者画面の「システム」→「パッケージ管理」→「追加」からニフクラ連携パッケージをインストールすると、管理者画面に「クラウドストレージ」というメニューが追加されます。
※追加(パッケージ管理)HDL-HAシリーズ 詳細ガイド

「クラウドストレージ」→「接続設定」→「ニフクラ」を開いて、ニフクラの接続設定を追加してください。ニフクラのアカウントの認証キー(アクセスキーとシークレットキー)は、ニフクラのコントロールパネルにログインして、「アカウント管理一覧」から取得できます。
※ニフクラの接続設定の追加HDL-HAシリーズ 詳細ガイド

接続設定を保存後、「接続テスト」をクリックして「接続テスト成功」が表示されれば完了です。

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ニフクラ連携パッケージの詳細情報。ニフクラとLAN DISK間での同期やデータコピーに対応する。

ニフクラへの同期/バックアップの設定を行う

LAN DISKとニフクラ間でのデータコピーには、以下の3つのモードが用意されています。

同期モード

LAN DISK上の共有フォルダとオブジェクトストレージを、常に同期するモードです。

同期の設定は、管理者画面の「クラウドストレージ」→「同期設定」から、ジョブという単位で管理します。
※同期設定HDL-HAシリーズ 詳細ガイド

各ジョブには、どのタイミングで、どこからどこへ、何をコピーするか、という設定を行います。たとえばLAN DISKとニフクラを同期する場合であれば、同期対象1に「ローカル」→「同期したいディスク」、同期対象2に「ニフクラ」→「先ほど設定したニフクラの接続設定」→「バケット名」を設定します。この際、同期先のバケットはあらかじめ作成しておく必要があることに注意してください。同期の対象をディスク全体ではなくサブフォルダに限定したり、フィルタにファイル名やフォルダ名を指定することで、特定のファイルやフォルダを同期の対象から外すこともできます。

クラウド上にLAN DISKのフォルダのコピーを常時持てるのはとても便利ですが、LAN DISK上で削除したファイルはクラウド上からも即時削除されてしまうため、オペレーションミスなどに起因するファイル喪失に対する保護にはなりません。データのバックアップという意味では、後述のデータコピーやバックアップを使うのがよいでしょう。

データコピー

同期モードはLAN DISK上のファイル単位で変更を検出して、その都度クラウドと同期を行うモードでした。これに対してデータコピーは、あらかじめ指定した時刻に、指定したフォルダ全体をコピーする機能です。

データコピーの設定は、管理者画面の「データバックアップ」→「データコピー」に、同期モードと同様にジョブを設定して管理します。ジョブの内容も、コピーを実行するスケジュールの指定以外は、同期モードとほぼ同じです。
※データコピーHDL-HAシリーズ 詳細ガイド

ひとつのジョブの実行スケジュールは、曜日と時刻で指定できますので、ジョブの実行タイミングは最大1日1回、最小週1回です。1日未満の毎時0分に実行するような細かいスケジュールでデータコピーを実行したい場合は、複数のジョブを登録する必要があります。

コピーはLAN DISKからクラウドにアップロードするだけでなく、その逆(クラウドからLAN DISKへのダウンロード)も設定できます。たとえば毎朝LAN DISKのデータをクラウドへバックアップしておき、クラウド上にのデータを週に1回、別のLAN DISKへリストアするといった運用を自動化することもできます。

バックアップ

バックアップは、複数の過去の履歴を残すことができるデータコピーとも言える機能です。前述のデータコピーでは、最後にコピーを行った時点のデータのみがクラウド上に保存されます。たとえば毎朝データコピーを行っている環境で、金曜日に誤ったファイルを保存してしまったとします。月曜日に誤り気づいたとしても、既にクラウド上のコピーも誤ったデータで上書きされてしまっているため、正しいファイルを復元することができません。バックアップの設定は、管理者画面の「データバックアップ」→「バックアップ」にジョブを設定して管理します。
※バックアップの設定HDL-HAシリーズ 詳細ガイド

バックアップは実行される都度、バケット内に作成した別フォルダにデータをコピーします。このフォルダはジョブの履歴保存数に設定された数だけ作成され、それ以降は古いフォルダから順に削除されます。たとえば1日1回バックアップを実行する環境で、履歴保存数を7に設定した場合、過去1週間ぶんのデータをクラウド上に残すことができるのです。

ただし前回のコピー時からの差分のみがクラウドにアップロードされるデータコピーとは異なり、毎回バックアップ対象フォルダ全体がアップロードの対象となるため、ネットワークの転送量やバックアップ完了までの待ち時間が大きくなる可能性がある点に気をつけてください。

履歴は無制限(削除しない)に保存することも可能です。ニフクラではデータ転送こそ10TB/月まで無料で利用できますが、保存する履歴数を増やせば増やすほどクラウドストレージの容量も大きくなるため、ストレージの利用料金には注意してください。

LAN DISK HDL-HAシリーズとニフクラを使って日々のデータ保守作業を簡単に

データ喪失に備えるバックアップの重要性は多くの方が理解していると思います。しかし重要性を理解していたとしても、面倒な作業になると人間はついサボってしまいがちです。そのため、バックアップは自動で、確実に行えなければなりません。また、LAN DISKが故障した際にクラウドからデータを書き戻すといった障害復旧作業は、可能な限りシンプルな手順で行えるべきです。

バックアップは完璧を目指そうとすればするほど、かかるコストが大きくなってしまいます。そのためとにかく完璧を目指すのではなく、守るべきデータの重要度とかけられるコストを天秤にかけ、最適な落とし所を見つけることが肝要です。

LAN DISKとニフクラのオブジェクトストレージを組み合わせれば、手間をかけず、低コストで、安全にデータを守ることができます。昨今のハードディスクの容量は増加の一途を辿っているため、おそらく数TBにも及ぶLAN DISKのディスク全体をクラウドへバックアップするのは、時間、料金的に難しいかもしれません。そのような場合でも、LAN DISKであればバックアップ対象となるフォルダやファイルを柔軟に制御できます。まずは重要なデータだけでも、クラウドへバックアップする所から始めてみてはどうでしょうか。