こんにちは、富士通クラウドテクノロジーズの甲斐です。 パブリッククラウドでのシステム構築時に知っておきたい概念のうち、オンプレミスにはない重要な用語「リージョン」「ゾーン」を中心に初心者向けに解説します。
クラウドは「雲の上」?クラウドの実態はデータセンターにある
「クラウド」と言いますが、クラウドの実態はどこにあるのでしょうか?その名の通り、雲の上にあるのでしょうか?
仮想的なサーバーやストレージ、ソフトウェアなどを好きな容量で好きな時に利用できるのがクラウドサービスですが、それらを支える物理的なサーバーやストレージなどの物理リソースはクラウド事業者のデータセンターに存在します。
「リージョン」と「ゾーン」という単位
クラウドサービスで利用する、データセンターを設置している独立したエリアのことを「リージョン」と呼びます。
ニフクラを例にすると、東日本・西日本・北米の各地にあるリージョンを利用できます。
東日本のリージョンを利用する場合、東日本にあるいずれかのデータセンターのリソースを利用していることになります。
そして、各リージョン内には独立したインフラの運用区画として「ゾーン」が設置されています。
「ゾーン」を、「アベイラビリティゾーン(AZ)」と呼ぶクラウドサービスもあります。
リージョンとゾーンはオンプレミスにはない概念
リージョンとゾーンは、オンプレミスにはない概念なので、わかりにくいかもしれません。理解を簡単にするために「ニフクラホテル」という架空のホテルチェーンを例に考えてみましょう。
- ニフクラホテルチェーンは「ニフクラホテル東日本」「ニフクラホテル西日本」「ニフクラホテル北米」を運営している
- ニフクラホテル東日本には、「本館」「新館」「別館」「旧館」がある
- ニフクラホテル西日本には、「本館」「新館」「別館」がある
- ニフクラホテル北米には、「本館」がある
あなたは旅行のプランニングを担当することになりました。
同行者に「今度の記念日はどこか旅行に行きたい」と言われたためです。
同行者は「せっかくだからスイートルームに泊まりたいわ」と言っています。
あなたは、知人から良い評判を聞いたニフクラホテルを利用することにしました。
どのホテルにするか
東日本在住のあなたの自宅からは西日本も北米も遠い上に、同行者は「飛行機は苦手」と言っています。
そのため、「ニフクラホテル東日本」へ行くことにしました。
どの館にするか
ニフクラホテルには、特定の建物(館)でしか提供されていない部屋タイプがあります。
あなたは、ニフクラホテルのスイートルームの部屋を探します。
ニフクラホテル東日本ではスイートルームは「本館」「新館」でのみ提供されているので、あなたは「ニフクラホテル東日本の本館」を利用することにしました。
ちなみにスイートルームは「ニフクラホテル西日本」では、「別館」で提供されていますが、あなたが利用するのは「ニフクラホテル東日本」のため、今回のあなたの候補からは外れます。
次にこの話をクラウドサービス「ニフクラ」を利用したいエンジニアとして置き換えてみましょう。
- ニフクラは「東日本リージョン(east-1)」「西日本リージョン(west-1)」「北米リージョン(us-east-1)」を運営している
- 東日本リージョンには、「east-11ゾーン」「east-12ゾーン」「east-13ゾーン」「east-14ゾーン」がある
- 西日本リージョンには、「west-11ゾーン」「west-12ゾーン」「west-13ゾーン」がある
- 北米リージョンには、 「us-east-11ゾーン」がある
※わかりやすさを優先するため、以降この記事では、ニフクラのリージョンについて「東日本リージョン(east-1)」→「東日本リージョン」、「西日本リージョン(west-1)」→「西日本リージョン」、「北米リージョン(us-east-1)」→「北米リージョン」と表記します。正確な情報はこちら
あなたはシステム構築を担当することになりました。
顧客に「既存システムをクラウド化したい」と言われたためです。
顧客は「大容量のデータを扱えて、レスポンスのよいシステムがほしい」と言っています。
あなたは、取引先から良い評判を聞いたニフクラを利用することにしました。
どのリージョンにするか
物理的に遠いリージョンよりも近いリージョンの方が、レイテンシー(遅延)が発生しにくくなります。
既存環境などとリージョンとの物理的な距離には注意が必要です。
あなたは、お客様の拠点から近い東日本リージョンを採用しました。
どのゾーンにするか
ニフクラでは、特定のゾーンでしか提供されていない機能があります。
あなたは、お客様の要望を満たせそうな高性能サーバーである「Type-h(slarge)」を利用したいと思いました。
ニフフラ東日本リージョンではType-h(slarge)は「east-11ゾーン」「east-12ゾーン」でのみ提供されているので、あなたは「ニフクラ東日本リージョンのeast-11ゾーン」を利用することにしました。
ちなみにType-h(slarge)は「西日本リージョン」では、「west-13ゾーン」で提供されていますが、あなたが利用するのは「東日本リージョン」のため、今回のあなたの候補からは外れます。
ホテルで部屋やプランを選択する時のようにクラウド利用時も、自分が望む条件を鑑みてリージョンとゾーンを選択しましょう。
リージョンとゾーンで可用性を向上できる
システム構築で必要なのは「障害が発生してもシステムが落ちない仕組みづくり」です。そのために行うべきなのが可用性向上対策です。
システムが落ちる原因となりうる不安要素のうち、代表的なものは以下の2点でしょう。
1点目は、地震をはじめとする自然災害です。
2点目は、機器の故障や障害です。クラウド事業者がどんなに備えていたとしても、クラウドの物理リソースは形あるものなのでいつかは壊れてしまいますし、ネットワーク障害などの発生をゼロにするのは不可能です。
リージョンを利用した可用性向上の考え方
クラウドのリージョンは日本全国、あるいは国境を超えた海外にも設置されています。
複数のリージョンを利用した冗長構成を取っておけば、例えば東日本が自然災害で被災した場合に西日本リージョンに取っておいたバックアップを使って復旧するなど、立地に依存する自然災害などのリスクに備えることができます。
ゾーンを利用した可用性向上の考え方
ホテルの本館や新館などのように、データセンター内で各ゾーンは別々の建物として設置されています。
そして、サーバーラックやネットワーク、電源、ストレージなどすべての物理リソースは、ゾーンごとに異なる物体です。
複数のゾーンを利用した冗長構成を取っておけば、万が一の物理リソースの故障や障害、例えば片方のゾーン内でネットワークスイッチが壊れるなどの事態に備えることができます。
クラウドでの可用性
リージョンやゾーンという概念を持つクラウドの特徴が活きるのが、災害発生時の復旧体制である「DR(ディザスタリカバリ)」です。 DRの概要、クラウドとオンプレミスでのDR対策の違いなどの基礎知識を、「クラウドを活用したDR対策の始め方」としてまとめていますので、こちらも合わせてご覧ください。
クラウドの可用性を情報セキュリティの観点から検討した記事もご用意しています。
クラウドでのシステム構築時には、複数のゾーンとリージョンを組み合わせて利用することでシステムの冗長化の実現や、可用性や耐障害性を高めることができます。要件に応じて適切なシステム構築を行いましょう。
さいごに
いかがでしたか?
今回は、パブリッククラウドでのシステム構築における重要な概念である「リージョン」と「ゾーン」について解説いたしました。クラウドナビの記事「リージョン/ゾーンとは」もご一読ください。
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