こんにちは、はじめまして、ニフティクラウド ストレージサービスチームの湊と申します。
「ニフティクラウド オブジェクトストレージ」が6月29日にリリースされました。
「ニフティクラウド オブジェクトストレージ」は、 インターフェイスとしてREST API(AmazonS3互換)を提供する、容量無制限のストレージサービスです。
詳しい仕様については下記ページをご覧ください。
>ニフティクラウド オブジェクトストレージ
この「オブジェクトストレージ」、はたしてどれぐらいの性能が出るのか、気になるところです。 そこで、リリース間もない「オブジェクトストレージ」の性能測定を行い、具体的な数字を出してみたいと思います。
ベンチマークツールについて
性能測定、つまり負荷掛けを行うツールとして「cosbench」を利用します。 S3リクエストによる大量かつマルチな負荷掛けをGUIベースで簡単に行えるツールです。 ご利用は自己責任でお願いいたします。
導入方法
CentOS環境への導入手順を簡単に説明させていただきます。 以下は、cosbenchコントローラー・ドライバーともに共通です。
# wget https://github.com/intel-cloud/cosbench/archive/master.zip
# unzip master.zip
# ln -s cosbench-master cos
cosbenchコントローラー
cosbenchドライバーに負荷掛けを行うよう命令を出すノードです。 一台のみです。
コントローラーとドライバーの設定を行います。 今回はドライバーを7台用いますので、[driver*]セクションを7つ記述する必要があります。
# cd cos/conf
# vi controller.conf
[controller]
drivers = 7...利用するcosbenchドライバーノードの台数。
log_level = DEBUG...ログの出力をデバッグレベルに変更。
log_file = log/system.log...デフォルト。
archive_dir = archive...デフォルト。
[driver1]
name = driver1...ドライバー名。ほかのドライバーと重複しない名前。
url = http://*****:18088/driver...cosbenchドライバーノードのIP。
コントローラーのユーザー設定を行います。 ブラウザーから利用するときのログインアカウントになります。
# cd cos/conf
# vi cosbench-users.xml
user username="*****" password="*****" roles="cosbench"
コントローラーの起動を行います。 今回は、コントローラーノードもドライバーとして利用するため、コントローラーとドライバーを両方起動します。
# cd cos
# sh start-all.sh
cosbenchドライバー
cosbenchコントローラーからの命令を受け、実際に負荷を掛けるノードです。 このノードの数が多いほど、より多くの負荷掛けを行うことができます。
ドライバーの設定を行います。 以下の記述はすべてのドライバーで共通です。
# cd cos/conf
# vi controller.conf
[controller]
drivers = 1
log_level = INFO
log_file = log/system.log
archive_dir = archive
[driver1]
name = driver1
url = http://127.0.0.1:18088/driver
ドライバーの起動を行います。
# cd cos
# sh start-driver.sh
ポート開放
以下のポート開放が必要となります。
- ドライバーノード→コントローラーノード:19088
- コントローラーノード→ドライバーノード:18088
- コントローラーノード→ドライバーノード:icmp
確認
おつかれさまです。 以下cosbenchコントローラーノードのURLにアクセスしてください。
http://cosbenchコントローラーノードのIP:19088/controller/
「IsAlive」がすべてグリーンになっていれば正しく設定完了しています。
計測環境
負荷掛けを行う環境です。 より高い負荷をかけるため、スペック・台数ともに規模を大きくしました。
クライアントサーバー
cosbenchコントローラーとドライバーが搭載されるサーバーです。 すべてニフティクラウド上のサーバーになります。
項目 | 値 |
---|---|
OS | CentOS 6.6 |
サーバータイプ | medium4 |
リージョン | east-2 |
台数 | 7(コントローラーノード×1・ドライバーノード×7) |
実施方法
cosbenchは「ワークロードファイル」というXML形式のファイルに書かれた負荷条件にしたがって、負荷掛けを行います。
一度ファイルを作成すれば後は何度でも使いまわすことができ、 また事前の大量ファイル作成・不要ファイルの削除も行えますのでとても便利です。
詳しい記述方法は下記の公式ガイドをご覧ください(平易な記述ですのでわかりやすいです)。
>https://github.com/intel-cloud/cosbench/blob/master/COSBenchUserGuide.pdf
計測は、オブジェクトストレージの性能をより客観的に把握するという意味で、クラウドストレージ(旧)との比較という形で行わせていただきます。
また、リージョン間のボトルネックを考慮し、すべてのアクセスはすべて同一リージョンから行います。
- west-1→クラウドストレージ(旧)(west-1)
- east-2→オブジェクトストレージ(east-2)
試験概要
「ニフティクラウド オブジェクトストレージ」はどれぐらいの数のリクエストを一秒間で処理でき、どれぐらいの転送速度なのか、といった観点からの試験になります。 前者は「スループット」・後者は「帯域幅」から確認します。
計測結果
スループットと帯域幅、二つの方向から性能値を求めるため、2パターンにて検証を行いました。 純粋な性能値を求めるという観点から、すべてhttpアクセスになります。 また、試験はそれぞれ3回ずつ実施し、その平均を性能値としています。
小さなファイルへの大量アクセス
スループット(秒間でいくつのリクエストを処理できるか)を求めることに主眼を置いた検証です。 短期間(60秒)での大量アクセス(並列アクセス数が256)を想定したパターンです。
試験条件
項目 | 値 |
---|---|
ファイルサイズ | 350K |
ワーカー(同時アクセス数) | 256 |
runtime(実行時間・秒) | 60 |
結果
90%-RT(ms・全リクエストの90%以下がこの値以下の時間で返却)
スループット(op/sec)
帯域幅(MB/sec)
すべての項目において、read・writeともにオブジェクトストレージはクラウドストレージ(旧)を大幅に上回る性能値を記録しています。 また、およそ数百/sec程度の大量アクセスになりましたが、すべてのリクエストが200応答(正常応答)となりました。
大きなファイルへの少数アクセス
巨大なファイル(1G)の転送速度を求めることに主眼を置いた検証です。 少数(10アクセス)の大きなファイルに対するアクセスを想定したパターンです。
試験条件
「runtime」は指定しません。 対象ファイルのサイズが大きい場合に指定すると負荷掛けが完了せず、正確な値の取得ができないことがあるからです。
結果
帯域幅(MB/sec)
前者の試験と同じく、read・writeともにオブジェクトストレージはクラウドストレージ(旧)を大幅に上回る結果となりました。
まとめ
- クラウドストレージ(旧)と比較すると、今回は全体的にオブジェクトストレージの方が良好な性能値となりました。
- クラウドストレージ(旧)をご利用のお客様も、移行の選択肢として検討できるのではないかと思います。
注意
ベンチマークの結果はクライアントやネットワークの環境によって左右されますので、 この結果は常に保障されるものでありません。 あくまでも参考値程度にとどめていただければと思います。