こんにちは。 ニフクラエンジニアミートアップ事務局の鮫島です。
2021年2月23日(水)に第34回ニフクラエンジニアミートアップを開催しました。 今回のテーマは「冴えてる!インフラエンジニアの育て方」です。
新年度が近づいている今、まさに「どうしようこうしよう」と右往左往している人が多いであろう新人教育、さらに難易度を上げてインフラエンジニアの教育がテーマでした。
しかも!文字通りの名著「インフラエンジニアの教科書」の著者である、佐野裕氏をお招きして、これからのインフラエンジニアを育てる方法について語っていただくという豪華な内容です。 これで、参加者が集まらないわけがなく、ニフクラエンジニアミートアップ史上最多の参加者が集まりました。
さらに、飛び入りでインフラエンジニアの処世術・キャリア論に関する著書で知られる佐々木康介氏がLTとQAセッションに参加してくださいました。
冴えてる!インフラエンジニアの育て方 佐野裕氏
恒例の乾杯からスタートし。さっそくお待ちかねのセッションに入りました。
簡単な自己紹介から入りましたが、富士通を経てLINEの創業メンバーかつ20年にわたるインフラエンジニアとさまざまなプロジェクトのマネジメント兼人材育成というインパクト大な経歴に驚かされます。
コンピューターの基本をよく理解して経験値を増やす(体で覚える)
先に結論から入りましたが、インフラエンジニアの育成に必要な要素は下記に凝縮されているようです。
①に挙げられた下記3つをあらかじめ学校や独学で会得?している人は有利ですが、意外とそういう新人は少ないそうです。
・コンピュータの仕組みの理解
・OSの挙動の理解
・ネットワークの理解
字面だけ見ると「え?ふつうすぎない?」と思ってしまいますが、実は難しいことであるのが徐々にわかってきます。
また、インフラエンジニアの業務範囲が企業によって異なるだけでなく、近年SREやDevOpsの台頭によって開発者とインフラの境界が曖昧になっているが、広義ではインフラエンジニアなのかも?ということでした。
技術的好奇心>学歴
まず、新人が入ってきたら誰もが性格を分析してみると思います。
ここで、インフラエンジニアとして有利なのは真面目で素直という普通誰もが新人に要求する素養にプラスして負けず嫌いだといいそうです。
基礎学力が観についているとか、ITへの適性というのはよほど人事担当者が無茶をしない限りはマッチングに失敗することは少ないと思いますが、佐野裕氏が最も重視するのは・・・
技術的好奇心
技術的好奇心が強く、基礎ができていて行動力がある人は放っておいても育つのだそうです。
※そういう人は、さらにハイレベルなトレーナーをつけて英才教育を施す…
ここまでは、言い方は悪いですが「当たりを引いた」場合のお話しです。
みんなが聞きたいのは、逆パターンでは?
技術的素養のない新人はどうすればいい?
そうなんです。技術的素養がない新人が採用されてしまうことはありえます。
トレーナー経験者なら、「うわーなんでこの人採用しちゃったの?」と思ったことが一度くらいはあると思います。
採用してしまったものは仕方がないので、前向きに対処を考えるしかないようです。
・センスがある→ヒントだけ与える
・センスがない→手取り足取り指導
というムーブでフォローするしかないようです。 ここでも、重要なのが「技術的好奇心の有無」。 これがあれば、何とかなる場合がある?
インフラエンジニアとしての経験値の貯め方
ここからが本場というか、非常に実践的な話がでてきます。
その理由は
・達成感がある
・インストールするたびに気づきがある
ということですが、問題が発生してもある程度のセンスがあれば、ネットで検索するなどの自力解決が可能です。 そこで、日本語の情報だけでなく英語情報(一次情報であることが多い)まで踏み込むと、知識レベルもスキルも上がります。 最後は、自宅サーバーや自宅ネットワーク構築を経験するといいそうです。 この辺りは、仕事への知的好奇心と趣味がどこまでクロスオーバーできるか?も重要だとは思います。
ネットワークって苦手な人多いよね?
ネットワークは、鬼門というかまさに実機で構築を経験しないとなかなか理解しづらい要素が多いため、苦手という人が多いようです。
まずは、範囲を絞って理解できる部分を少しづつ広げていくのが良いそうです。
最低限、「ルーティング」「ゲートウェイ」「L2、L3、L4、L7の違い」「TCPとUDPの違い」などを説明できるようになる必要があります。
厳しい指導vs優しい指導(究極の選択)
これも、トレーナー経験者なら、誰もが悩む部分でしょう。
その昔(実は最近まで)幅を利かせていた?「鬼軍曹」的な指導は、一歩間違わなくてもパワハラ扱いされる時代です。
かといって、甘やかしてはいけないので、佐野氏がアドバイスするのは「心理的な安全性」と「適度な緊張感」のバランスです。
トレーナーのタイプ、トレーニーのタイプもさまざまですので、何でもOK何でもダメ出しをするのではなく、ダメでも代案を示しつつ前向きな方向に導くのが好ましいとのことです。
まとめ
冒頭で結論が述べられましたので、基本が大事ということでした。 ※手抜きではありません。本当です!
そういった「基本的な部分」はもちろん、今回のセッションでは詳しく語られなかった部分は、「インフラエンジニアの教科書(3にも期待)」シリーズをぜひご覧いただきたいと思います。
QAセッション 佐野裕氏と佐々木康介氏も乱入?
お待ちかねのSli.doを利用したQAセッションです。
基本的には、匿名で投稿された質問に、いいね!がたくさんついたものから回答していくというシステムです。
QAの中で、面白かったものをダイジェストでご紹介します。
※複数名の回答をミックスしている場合があります。
回答:成長してその会社に満足できなくなったら転職するしかない。慰留コミュニケーションでやりたい業務をさせるというのもインフラエンジニアだと選択肢が少ない。転職先で出世して仕事を発注してもらったり、「あいつを育てたのは俺だ」といえるようにお互い納得して快く送り出してあげるのがいいのでは?
回答:今だと、PythonとかGolangだけど流行もあるので、一概にこれといえない。むしろ状況に応じた柔軟性が大事。Ansibleとかできるのもいい。前の質問でもいったようにそもそもできる人は少ないので何かできると有利。何か自分の好きなものを選んで習得しておけばいいと思う。
回答:どちらを選択するかは、ある意味人生観になってしまうので好きなほうでいいのでは?でも、クラウドが主流になると、ネットワーク周りも仮想化されているのでインフラエンジニアがやるようになってきたのである程度必要。でも、好きなことを極めたほうがいい。 ※ここから、佐々木康介氏も乱入して3人態勢でコメントを行うようになる。
回答:とてもいいです。もっとやってほしい。これは、先輩にかわいがられるタイプ。こういうのをみるとほっこりする。何なら、これから(佐野氏と佐々木氏で)飲みにつれていきたいくらい。こういう人は放っておいても育つ。
ほっこりしたところで、いくらでも続きそうなQAセッションはいったん終わって、ガッキー推しインフラエンジニアの佐々木康介氏によるLTがスタートしました。
ガッキーで育てる新人エンジニア
ガッキーが好きすぎることがわかる自己紹介を経て、インフラエンジニアが「冴えてる状態」を定義します。
ITに興味がない人は冴えていない
やりたいことがある人は冴えている
といいつつ、実際は「サーバーをやりたいです!」なんてことを言う人はいないとのこと。
つまり、冴えているエンジニアはほとんどいないので、技術に興味を持ってもらうのがガッキーメソッドだそうです。
箇条書きにしてみました。
・新人エンジニアととりあえず、会話してお互いの共通項を探る
・共通項はたぶんガッキー(みんな好きだし)
・ガッキーをフックにデモを実演してIT技術の面白さを感じてもらう
・特別なスキルが無くても簡単にできることを体験させる
・ITに興味が出る=冴えている状態(ゴール)
ようするに技術をたのしい・面白いと感じるように方向付けをすることが大事ということですね。 インフラに興味をもってもらうためには、まず入口で何かを触って楽しさを感じてもらうのが良いそうです。
心が汚れている私はこんなガッキーメソッドじゃないかと不安でしたがまったくの杞憂でした。
先輩:今日からこれがお前のサーバーだ!大事に扱え!
新人:イエス!サー!
先輩:お前のサーバーの名前は何だ?
新人:ガッキーであります!サー!
先輩:メモリーを入れてみろ!
新人:イエス!サー!
先輩:もっと強く!
※ハートマン軍曹(ガニー軍曹)の口調で
佐々木康介氏も再三おっしゃっていましたが、インフラエンジニアって面白くない・地味なので、面白さはマニアでないとなかなか楽しいと感じられないという背景もあるようです。 それをいかに面白いと新人に感じてもらえるか?そこがガッキーメソッドの示唆的な部分だと感じました。 インフラエンジニアの育成にはさまざまなライフハックを駆使する必要もありますが、ご興味を持たれた方は著書を読んでみるといいでしょう。
詳しくはスライドが公開されているのでご覧ください。
その後も少ない残り時間を使って、QAセッションが最後まで盛りあがったのはいうまでもありません。
まとめ
今回は、教える立場のエンジニアだけでなく、これから社会に飛び込む学生さんや、まさに学習中の新人エンジニアもかなり参加されていたようです。
今回のお話で感じたのは、基本の重要さと教えるほうも楽しさを伝える工夫が必要ということです。
深刻なインフラエンジニア不足が叫ばれる中で、今回のニフクラエンジニアミートアップに参加してくださった皆様が、ちょっとでも、新人インフラエンジニアの育成・成長のヒントを得てくださっていれば幸いです。
また次回もお楽しみに!
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