ニフクラ ブログ

ニフクラ/FJ Cloud-Vやクラウドの技術について、エンジニアが語るブログです。

ルーター機能のルートテーブルを利用してみた

ニフティクラウドのネットワーク機能では、仮想的なルーターを利用することができます。ルーターではDHCP、NAT、Webプロキシなどの設定が可能です。また、複数のルーター同士を接続するためにルートテーブルの機能があります。 今回はそのルートテーブルを利用して、インターネットに接続するためのゲートウェイを作成してみました。

ゴール

ゴールの構成は以下の通りです。完成すれば、同じ構成図がニフティクラウドのコントロールパネル (以下コンパネ)のネットワークから確認することができます。

try_routetable_goal.png

また、今回の構成を実現するにあたっての想定の料金は以下の通りです。 今回の記事ではリージョンはwest-1として進めます。

  • プライベートLAN × 2 = 20円/時 × 2 = 40円/時
  • サーバー × 2 = 42円/時 × 2 = 84円/時
  • ファイアウォール × 1 = 0円/時
  • ルーター × 1 = 20円/時
  • ルートテーブル × 1 = 0円/時

上記の合計で144円/時となります(料金は2016/12/26時点のものとなります)。

プライベートLANの作成

まずはプライベートLANを作成します。 コンパネの左メニューから「ネットワーク」->「プライベートLAN作成」を選択します。

今回は2つのプライベートLAN(vlan1、vlan2)を作成します。 プライベートLAN名は好きなものを指定してください。 ゾーンは今回はwest-11を選択します。 1つ目のプライベートLANのCIDRを172.16.0.0/24、2つ目のプライベートLANのCIDRを192.168.0.0/24として作成します。 料金プランは従量を選択します。

try_routetable_addding_vlan1.png

try_routetable_addding_vlan2.png

ファイアウォールの作成

次にファイアウォールを作成します。 今回、ニフティクラウド上に作成するリソースはすべて同じファイアウォールに所属させるので、サーバー間で必要な設定は特にありません。ニフティクラウド上のサーバーにSSHログインするための許可を設定すればOKです。

VMの作成

2つVMを作成します。1つは先程作成したvlan1にのみに接続されたグローバルネットワークとは隔離されたVMで、もう1つはvlan2とグローバルネットワークに接続されたVyOSを作成します。

VyOSの作成

まず、VyOSを作成します。 ニフティクラウドにすでに公開されているパブリックイメージがあるのでそれを利用します。 料金は従量を選択します。 プライベート側は先程作成したvlan2を選択します。

try_routetable_addding_server2.png

サーバーが作成できたら、IPアドレスとインターネットに接続するためのNATの設定を行います。 VyOSにログインしコマンドを実行します。ユーザーはVyOSになるので注意してください。

  • ssh -i sshkey_private.pem vyos@xxx.xxx.xxx.xxx
  • configure

ここで編集モードになります。

  • del interfaces ethernet eth1 address dhcp
  • set interfaces ethernet eth1 address '192.168.0.10/24'

上記でプライベートIPの設定を行います。以下でvlan1に属するサーバーがインターネットに出るための設定を行います。

  • set nat source rule 1 source address 172.16.0.0/24
  • set nat source rule 1 translation address 'masquerade'
  • set nat source rule 1 outbound-interface eth0
  • commit
  • save

また、vlan1へのルーティングも追加しておきます。 exitで編集モードを抜けて以下を実行します。 vlan1へのルーティングをOSレベルで設定しています。

  • ip r add 172.16.0.0/24 via 192.168.0.1 dev eth1

CentOS7の作成

次にグローバルネットワークとは隔離されたVMを作成します。 ゲストOSはCentOS7を選択します。 料金は従量を選択します。

try_routetable_addding_server1.png

サーバーが作成できたら、IPアドレスの設定をします。 c7サーバーにログインし、コマンドを実行します。

  • ssh -i sshkey_private.pem root@xxx.xxx.xxx.xxx
  • cat /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-ens192
DEVICE=ens192
BOOTPROTO=static
IPADDR=172.16.0.10
NETWORK=172.16.0.0
NETMASK=255.255.255.0
GATEWAY=172.16.0.1
ONBOOT=yes
PEERDNS=no
EOF

この後、サーバーを再起動するので再起動した際にもvlan2へのルーティングが通るようにしておきます。

  • cat /etc/sysconfig/network-scripts/route-ens192
192.168.0.0/24 via 172.16.0.1

ルーターが作成されていないので、まだVM同士の通信はできません。 CentOS7の方はプライベートIPを設定できたら、グローバル側のインタフェースを外しておきましょう。外さなくても問題ないですが、外した方が料金も若干安くなるのでおすすめです。

ルーターの作成

VMの作成が完了したらルーターを作成します。 左メニューの「ネットワーク」から「ルーター作成」を選択します。 ルーターには作成した2つのプライベートLANを接続します。 各プライベートLANにIPアドレスを指定しない場合は、.1がルーターのIPとして利用されます。 ファイアウォールはサーバーと同じファイアウォールを設定します。 タイプは一番小さい「router.small (10ルール)」で作成します。

try_routetable_addding_server2.png

ルーター作成後のc7サーバーへのプライベートIPでのログインはvyos経由で行えます。 vyos上にSSHキーを配置してログインしてください。先程、実施したOSレベルでのルーティング追加がうまくできていないと通信できません。

ルートテーブルの作成と設定

ルートテーブルは今回ゲートウェイとしての役割となります。 そのため、作成前にc7サーバーでpingでも実行してみます。まだ、疎通できていないことが確認できると思います。

$ ping 8.8.8.8
PING 8.8.8.8 (8.8.8.8) 56(84) bytes of data.
From 172.16.0.1 icmp_seq=1 Destination Net Unreachable

この状態でルートテーブルを作成し、ルーターに設定してみます。 ルートテーブルは左メニューの「ルートテーブル」から作成できます。 「ディスティネーション」に0.0.0.0/0を設定し、ターゲットは「IPアドレス」を設定し、192.168.0.10を入力します。192.168.0.10はvyosに割り振ったプライベート側のIPとなります。

try_routetable_addding_routetable.png

要するにインターネット(0.0.0.0/0)に出る場合には、次のルーター(vyos)の192.168.0.10のインタフェースをホップします。という設定を作成します。

ルートテーブルが作成できたら、ルーターにルートテーブルを設定します。 ルートテーブルは作成しただけではダメでルーターに設定する必要があります。 作成したルーターを選択し、「ルーターの操作」から「ルートテーブルの設定」を選択します。 そして、事前に作成したルートテーブルを選択します。

try_routetable_setting_routetable.png

動作確認

ここまでできれば、c7がインターネットに接続できるようになっていると思います。 先程のpingがどうなっているかを確認してみてください。

# ping 8.8.8.8
PING 8.8.8.8 (8.8.8.8) 56(84) bytes of data.
64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=1 ttl=55 time=10.5 ms
64 bytes from 8.8.8.8: icmp_seq=2 ttl=55 time=10.8 ms

上記のようにc7サーバーから外部に通信できていることが確認できると思います。 tracetouteを見てもルートテーブルで設定した通り、192.168.0.10 -> VyOSの共通グローバルのGatewayを通って通信していると思います。 VyOSの共通グローバル側をモニタしてみても良いと思います。 以下はVyOSで編集モードになりeth0 をモニタリングしている状況です。

  • run monitor interfaces ethernet eth0

try_routetable_ret_monitoring_eth0.png

大きなファイルをダウンロードしてる時にRX Rateが大幅に増加することが確認できると思います。

【おまけ】なぜこの構成にしたのか

2016/12/26時点のニフティクラウドでルーターのみを使用してルートテーブルを使用する場合はこの構成しかできません。理由は以下の通りです。

  • 1つのプライベートLANが複数の「ルーター」に所属することができないため、同一プライベートLAN内でのルーター同士の通信ができない。
  • そのため、パブリックイメージからVyOSを構築したが、ニフティクラウドの「インスタンス」には複数のプライベートネットワークが接続できない。
  • なので、ルーター同士の通信は実現できるが、ルーティング先が共通グローバルしかない。

という理由になります。

基本的にルートテーブルは、VPNゲートウェイと連動して使用するのがメインの使い方となります。 VPNゲートウェイについては、ほかに紹介している記事が多数ありますので、こちらをご確認ください。

また、今回は隔離されたネットワークにあるサーバーをインターネットに接続しただけなので、ルーター機能のSNATを利用しても実現可能です。 ルートテーブルの紹介も兼ねて、今回の構成を紹介いたしました。